本棚 『おいしいごはんが食べられますように』

著者がラジオ(TBSラジオ アシタノカレッジ)でゲストとして出演していて、本屋で表紙がかわいかったのもあって、久しぶりに小説を読みました。

おいしいごはんが食べられますように』高瀬隼子 著

ラジオで著者の声を聞いていたものの、小説の内容はあまりあたまに入っていなかった。
表紙やタイトルからは、ほっこりあったかい系にも思える。(こう言ってはなんだが、瀬尾まいこさんを思わせるような雰囲気のタイトル。)
鍋にうつる人影にだけ、すこし不気味さがある。裏表紙のケーキも、読み終えてみると、こんな出方だとは。

最初のあたりの「藤さん」の出てくるシーンで「なんか気持ち悪!」と、現実の世界の色々な場面の気持ち悪さがリフレインして凝縮されたものを見る感覚になる。
人には人それぞれ多面的で、いいところも嫌な部分がある。
でも私が嫌だと思う面も、当人にとっては正しい行いなのかもしれない。
淡々とした描写なのに、それぞれの人の振る舞いや言動、ほんのかすかな機微がすごくリアルだと思った。
とくに後半の押尾さんの回想シーンが、雨音まで聞こえてきそうで、その場に引き込まれるようだった。
終始言葉にならない心地悪さを感じられる、不思議な話し。
久しぶりに小説を読めてよかった。